Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

北海道工業大学と北海道薬科大学が将来的な統合を視野に入れたキャンパス移転計画を発表

high190です。
北海道薬科大学は、同一法人が設置する北海道工業大学との将来的な統合も視野に入れた移転計画を発表しました。


学校法人北海道尚志学園(札幌市豊平区、西安信理事長)が、設置する北海道工業大学(同市手稲区)と北海道薬科大学小樽市)の2018年度以降の統合を柱とした大規模再編を構想していることが8日、分かった。道工大の手稲前田キャンパスに大学・高校も集約させ、機能的な教育環境を整備する見通しだ。
同学園によると、14年4月に道工大医療工学部を医療学部(仮称)に再編して理学療法、診療放射線、看護の3学科を新設、学部定員を現行から190人増やして290人とする。一方、創生工学部(電気・機械・情報系)と空間創造学部(建築・環境系)は統合して工学部に改め、定員も現行から140人減らす。
その上で道薬科大は15年頃、北海道自動車短大(札幌市豊平区)は17年度までに手稲へと移転する。18年度以降に道工大と道薬科大を統合し、北海道尚志学園高校も手稲に移る。
道薬科大と道工大は開学から約40年が経過し、校舎の耐震化工事が必要になっていた。長引く不況で私立大学の運営が厳しさを増す中、校舎の新設・移転と同時に「工学系に限らずに医療専門職の育成も幅広く行う大学」としてのアピールを強め、少子化時代に対応する。

同一設置者間での移転計画のようで、大学のみならずその他の設置校についても移転を計画している大規模事業のようです。計画概要が設置者Webサイトで公表されています。


本法人が設置する北海道薬科大学小樽市桂岡町)が、北海道工業大学の前田キャンパス(札幌市手稲区)に、平成27年4月を目途に拠点を移すことになりました。
また、北海道工業大学では、前田キャンパスの再整備と平成26年4月の開設を目指し、学部・学科の再編を計画しています。現在の4学部9学科は3学部12学科へ再編し、募集定員は現在の800名から850名に拡大します。具体的には、現在の創生工学部と空間創造学部は工学部に統合、医療工学部は医療学部(仮称)に名称を変更し、義肢装具学科の定員増、診療放射線学科、理学療法学科、看護学科、3学科の新設を計画しています。未来デザイン学部は、人間社会学科とメディアデザイン学科の2学科体制を維持し、人間社会学科のカリキュラムを全面改訂します。医療工学部(医療学部)と薬大の共同カリキュラムの開発等、近接する医療系領域での連携策も検討し、より医療色を強めた内容にバージョンアップをはかる予定です。
学部・学科の再編にあわせて、耐震対策を兼ねて施設の新設、再整備等を実施しハード面の充実もはかります。
北海道薬科大学の学部・学科の再編、入学定員の変更はありません。また、移転跡地となる薬大の桂岡キャンパスは、研究・研修施設として存続しながら、小樽地域とのつながりをより一層強化していく計画です。
今回の移転は、本法人が医療と工学の発展的な融合をはかりながら、地域社会や産業界により付加価値の高い研究・教育体制を提供していく第一歩となり、両大学の将来の統合も視野に入れたものです。
この他中の島キャンパスの将来構想等、今後の計画の予定については、逐次ホームページ等でお知らせします。

同一学校法人による大学統合については、来年度から学校法人常葉学園が設置する3大学(常葉学園大学浜松大学富士常葉大学)を統合して誕生する常葉大学などがあります。常葉大学の場合、常葉学園大学を名称変更し、他の2大学は廃止する手続きのようです。*1こうした、経営資源の最適化を目指した統合計画は既にいくつかの例がありますが、今後さらに増えていくことが予想されます。
ただ、大学統合には調整事項が複雑に絡み合うため、愛知県の同朋学園のように簡単に統合できないという例も実際にあります。*2大学にはステークホルダーが多く存在するため、粘り強く説得交渉にあたり、かつ説明責任を果たせるようにしないといけませんし、企業のようにスクラップアンドビルドができない面を持っていることを念頭に置いて、計画を検討する必要があります。設置者のプレスリリースに地域とのつながりをより一層強化すると書かれていますので、地域が大学に対して何を求めているのか、大学が果たすべき役割は何かをしっかり認識した上で納得のいく形で移転が完了することを願っています。

*1:平成24年5月末申請の大学の学部等の設置等認可の諮問について(文部科学省) http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/06/1322157.htm

*2:名古屋・同朋学園の運営する3大学の統合計画が中止に http://d.hatena.ne.jp/high190/20110614