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Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

宇都宮大学と横浜国立大学が「大学情報戦略の協調に関する協定」を締結。相互に重要データをバックアップ

high190です。
昨年の東日本大震災において、情報ネットワークの安定的運用のためにデータセンターの活用など、非常時でも情報が適切に管理できる体制を整える対策を取った大学も少なくないのではないかと思います。しかし、データセンターの活用はデータ保全上有用ですが相応のコストがかかるため、導入に慎重な姿勢の大学もあるのではないでしょうか。導入・維持コストをどう解決するかが大きな課題であると言えるでしょう。このような問題に対し、大学間連携で対応しようという試みが行われようとしています。宇都宮大学横浜国立大学では、両大学間で重要情報を相互に保存し合うことを盛り込んだ「大学情報戦略の協調に関する協定」を締結し、コストをかけずにリスクを回避しようとしています。


横浜国立大(横浜市保土ヶ谷区)は16日、震災や停電などで学籍や授業記録、研究成果などの電子データが失われた場合に、即時に復旧できるようにするため、宇都宮大(宇都宮市峰町)と協力し、相互に重要なデータをコンピューターサーバーに保管し合うことを盛り込んだ「大学情報戦略の協調に関する協定」を締結した。東日本大震災でデータ保護の必要性が高まっており、両大学によると、先進的な取り組みという。
横浜国大の鈴木邦雄、宇都宮大の進村武男両学長が16日、横浜国大で協定に調印した。
両大学によると、想定しているのは、大規模な自然災害や停電、サイバー攻撃などでコンピューターがダメージを受けデータを失う恐れがある緊急事態。学生や卒業者の学籍や履修記録、研究データといった大学運営に必要なデータや、緊急時の学生や教職員の安否情報などを、両大学内に設置するサーバーにそれぞれ保管し、互いにバックアップする体制の構築を目指す。保管データは、互いに閲覧できないようにする。
年内に、両大学の情報管理担当者らが、保管データの優先順位や予算、データを取り扱う人材の育成などを盛り込んだ運営計画を作成する。実際の運用は2〜3年後になる予定だ。
一般的にデータが失われた場合、復旧に数か月はかかると見込まれるが、「相互バックアップ」により即日で復旧でき、復旧の時間・コストの大幅削減が期待できるという。両大学は互いに距離が100キロ以上離れ、災害で同時に被災する可能性が低いことなどから、2009年から災害時のデータの保護とバックアップを連携して行う研究を進めてきた。10年3月から実験用サーバーに一部データを保管し合い、実験を進めている。
宇都宮大では昨年3月の東日本大震災直後に、栃木県内で発生した約20時間にわたる大規模停電や、その後の計画停電でサーバーに多大な負荷がかかり、データが失われるおそれがあったという。
鈴木学長は協定締結後、「データを喪失するリスクを低コストで回避し、研究に打ち込める環境を整えたい」と期待を寄せた。

大学間で重要情報の保全を共同で実施するという取り組みは珍しいのではないでしょうか。ただ、相互にデータを閲覧できなくするなどの対応を取っていることから、設置形態を問わず実施可能であるとも言えるように思います。両大学のWebサイトには、まだ協定締結についてリリースされていませんが、両大学間で進めてきた情報の相互保管については、国立大学法人評価委員会による「国立大学法人大学共同利用機関法人の改革推進状況(平成22年度)」で取り組みが紹介されています。

東日本大震災が起こったことで、改めて日本が地震大国であることを痛感させられましたが、次にいつ大きな災害が襲ってくるかを考えて日常から対策を練っておく必要があります。大学にとって学務情報や学籍情報などは緊急時においてすぐに参照する必要のある情報であり、情報基盤を強固にしておくことは危機管理上も大切なことです。セキュリティ上の問題をクリアできれば、大学間連携で対応可能であることを今回の事例が示してくれているように思いました。
また、大学間連携は事務の効率化や職員の共同研修など、既に実施されている例もありますが、*1宇都宮大学横浜国立大学の例のように出来ることはまだまだあると思われ、国立大学法人の取り組みから学ぶことはたくさんあるように感じます。大学間連携には労力もかかると思いますが、他組織と協働することは職員の能力開発に大きく資するとも考えられるため、自学で大学間連携を行おうと考えた場合の対象校、実施内容などをシミュレーションしてみるのも面白いかも知れません。

*1:中部地区の8国立大学法人が事務全般の連携協定を全国で初めて締結 http://d.hatena.ne.jp/high190/20111003