Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

東日本大震災に伴うボランティア参加者の単位認定、文部科学省が把握している大学は6校にとどまることが判明

high190です。
文部科学省東日本大震災のボランティア活動について、修学上の配慮を行うよう各大学に通知していますが、実際にボランティア活動を単位認定している大学は6大学にとどまっていることが判明したそうです。


文部科学省東日本大震災での学生のボランティア活動を単位として認めることが可能との通知を大学に出しているが、単位認定の動きが広がらない。文科省が7日までに把握したのは6校だけ。大学側からは「活動をどう単位に認定するのか難しい」などの声が上がっている。
文科省によると、6校は、山形大、岩手大、滋賀大、大分大、明治大、文教大。単位認定を文科省に報告する義務はなく、ほかの大学が認定している可能性もあるが、数は少ないとみられる。
このうち、明治大は文科省の通知を受け、全学共通の「東日本大震災に伴うボランティア実習」を開設。事前講義や現場での活動、リポート提出などで2単位が認定される。同大の担当者は「被災地で学生が微力でも力になれたら良いし、学生の自主性、社会性の成長にもつながるのではないか」と意義を説明する。
岩手大も全学共通の「コミュニティーサポート実習」で、約5日間の活動実績とリポートの提出などを条件に2単位を与える。しかし、卒業に必要な単位としては認められないといい、担当者は「学生がボランティア活動をした証明書のような意味合い」としている。
大分大は、講義に関連するボランティア活動を行った際に、個別に相談して単位認定する。

文部科学省は単位認定の実績報告を求めていないことから、実数は分かりませんが、余震や福島第一原子力発電所の事故による放射能の問題等もあることから各大学が学生に対して積極的に勧めることができなかったのではないでしょうか。
また、記事中にもあるようにボランティア活動を既存の教育課程の上でどのように単位認定するか、大学内でも議論があったと思いますし、認定を行う際の基準をどのように整備するかという問題もあります。

なお、文部科学省から発出された各大学への通知には、ボランティア活動のための修学上の配慮として以下のように記載されています。


1.ボランティア活動のための修学上の配慮
ボランティア活動参加者に対し、補講・追試の実施やレポートの活用による学修評価、休学した場合のきめ細かな履修対応などを通じ、学生がボランティア活動に参加しやすい環境作りに配慮すること。
各大学等の判断により、ボランティア活動が授業の目的と密接に関わる場合は、ボランティア活動の実践を実習・演習等の授業の一環として位置付け、単位を付与することができること。
ボランティア活動のため休学する場合、その期間の学費の取扱など学生の便宜のための必要な配慮を図ることが考えられること。

学生のボランティア活動を推進したい文部科学省と慎重に検討を進めたい大学との間に、若干の温度差があるようにも感じられます。
文部科学省は、全学共通科目を新規に開講した明治大学の先行事例を紹介するなどして、継続的に制度の活用を促していくことが必要ではないでしょうか。