Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

京都大学が開設予定の全寮制・5年一貫制大学院には今後の大学改革のポイントが隠れている

high190です。
京都大学が全寮制の5年一貫制大学院について、2012年4月の開設を目指して検討を進めているそうです。


京都大は27日までに、企業や官公庁などでリーダーとして活躍する人材を養成する全寮制の学寮型大学院を2012年4月に開設する計画案をまとめた。5年一貫制で文系、理系の幅広い分野の知識や経験を習得できる教育重点型の大学院を目指す。
計画案によると、新大学院の入学定員は16〜20人。京都市左京区吉田キャンパス周辺に新設する寮で共同生活し、院生同士や寮長を務める教員と昼夜を問わず議論できる環境を整えて「24時間教育」を施す。大学院生は、1、2年目は京大の各研究科などの研究室に配属され、専門教育を受ける。3年目には医工系や人文系など8分野からなる高度な教養科目を履修し、4年目には海外の大学や企業などに留学、最終の5年目には短期のインターンシップ(就業体験)や博士論文の作成を行う。すべての授業を英語で実施し、複数の外国語の習得を課す。全学生を対象に、年間約300万円の奨学金を給付する予定。現状の大学院教育をめぐっては、専門性を重視しているため、企業など社会が求める人材のニーズと合っていないとの声が上がっていた。京大は、経済界などの要望を受け新たなタイプの大学院の創設を検討していた。文部科学省は来年度から、世界のリーダーを養成する「リーディング大学院」のプログラムへの支援を予定しており、京大は今回の計画案を応募する。

全寮制で5年一貫というのは、今まで日本の大学院教育でも例がないのではないかと思います。
また、カリキュラムについてもかなり独特の内容になっていますね。全ての授業は英語で実施。4年目に海外の大学や企業に留学とありますが、これが修了要件の中に組み込まれているかということと、留学先は具体的にどのような大学及び企業を想定しているのかについて関心があります。5年目には短期のインターンシップを科すそうですが、博士課程と職業の接続性を意識したプログラムですね。インターンシップが必須なのかどうかが上記の記事からは読み取れないのが残念ですが、博士課程でインターンシップを科すことにもっと日本の大学は積極的になっていいんじゃないでしょうか。上記の記事からは学際的な研究科であるように感じますが、授与する学位名称が何になるのかも気になりますね。
さて、ちょっと話題は変わりますが、最近では秋田の国際教養大学が英語による講義実施、留学の必須化など、独自の教育を実施して話題になっています。今回の京都大学大学院についても言えることですが、これからの大学改革のポイントをまとめると以下の3点ではないかと思います。

  • 英語による講義実施、留学の必須化等による大学の国際化
  • キャンパスの24時間化
  • 学寮制の導入

リーダー養成型大学院については、来年度から文部科学省でも支援することになっていますし、学寮制を導入する大学院が他にも出てくるかも知れませんね。