Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

国公私立大学図書館と国立情報学研究所が共同で電子ジャーナルの安定供給に向けたコンソーシアムを設立へ

high190です。
国公私立大学の図書館団体と国立情報学研究所は、値上がりの続く電子ジャーナル市場での交渉力向上を目的としたコンソーシアムを立ち上げるそうです。


国公私立大学図書館国立情報学研究所は10月13日、従来の電子ジャーナル・コンソーシアムの連携を強化、新たな組織を立ち上げるための協定を締結すると発表した。協定をもとに、国公立大学の500近い加盟図書館を持つ大規模コンソーシアム形成に向けて活動を開始。大学の研究活動で必要とされる電子ジャーナルを安定的に提供できる体制を整える。

(中略)

学術情報誌の中で現在中心となるものはインターネットを介して頒布される電子ジャーナルとなるが、こうしたアカデミック向けの電子ジャーナルは大手版元の寡占市場となっており、自然科学分野の学術誌では1995年から毎年平均8%の値上げ率となっている。

(中略)

寡占市場を背景に、研究者には必読の学術誌を武器にして値上げを重ねるエルゼビア(Elsevier)社をはじめとした海外の大手学術誌出版社に対抗し得る価格交渉力を得るため、日本では2000年に国立大学の電子ジャーナル・タスクフォース「JANUL」が設立され、現在国立大学の図書館協会会員館91館が参加、34の出版社と交渉にあたっている。
また、私立大学は2003年、私立大学図書館コンソーシアムを設立。現在は公私立大学の図書館375館まで参加館が増えた電子ジャーナル・コンソーシアム「PULC」として35の出版社と交渉にあたっている。
しかし、こうした努力をしても寡占市場であることや研究者としては必読の学術誌は外せないことから、年々値上がりしているのが現状だ。

(中略)

こうした背景から、これまで別組織であった国立大学の電子ジャーナル・タスクフォース「JANUL」と公私立大学の「PULC」がタッグを組み、より大きな交渉力を得ようというのが今回の協定のメインの趣旨となる。
両組織が手を結び、1つにまとまることで、参加図書館数は466館となるが、米国のコンソーシアムLyrasis(参加機関約2,000)に次ぐ規模となり、世界でも有数の大規模コンソーシアムとなる。
新たな電子ジャーナルコンソーシアムの役割としては、大手出版社との統一的な契約交渉が第一となるが、国立情報学研究所で手掛けてきた電子ジャーナルバックアップファイルの整備や利用促進支援などにおいても今後活動していく予定だ。

電子ジャーナル及び学術雑誌の価格高騰については、これまでも問題になっていました。学術雑誌の高騰に関する記事を書いたのはちょうど2年前になります。

日本の大学全体で対応に乗り出した訳ですが、このニュースのブックマークコメントを読むと「果たして本当に交渉力を持つことができるのか」という主張が多いように感じました。もちろん、諸外国で投稿された論文を閲覧するのに大手出版社の電子ジャーナルは必須ですが、ブックマークコメントにもあったように、このコンソーシアムで独自の電子ジャーナルを作ってしまうというのもひとつの対抗策になるのかも知れません。
ちなみにアメリカのコンソーシアムには約2,000機関が参加しているそうですが、その他の国ではどうなんでしょう。そもそも予算が潤沢で悩む必要がないのか、調達コストを下げるために何か工夫をしているのか、このあたりのことを探る必要がありますね。