Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

Amazon Kindleは大学の講義に不向き?

high190です。
最近、教育機関向けのタブレットPCについての動向がかなりざわついていますね。これもiPad効果なのでしょうか。
さて、アメリカのバージニア大学ダーデンビジネススクールではKindleを学生に配布して講義での活用についての評価を実施したところ、意外な結果が出たようです。


Kindle DXが発表される前、大型のKindleが学生向けに発売されるなどと噂されていたものでした。iPadをリークしたのが教科書分野に強いマグロウヒルだったことからも読み取れるとおり、教育コンテンツは電子書籍と切り離せない重要な市場のひとつ。実際にアマゾンは昨年秋から一部の学校にKindle DXを配布、実地での評価実験を行っているようです。選ばれたのは全部で7校。そのひとつがバージニア大学ダーデンビジネススクールで、ランダムに選ばれた62名の新入生へKindle DXを配布し、評価を行っています。
さて結果はどうなったか。「次の新入生にKindle DXを薦めますか?」という問いに、利用した75〜80%の学生は「薦めない」と回答しました。不評の理由として、同校のMBAディレクター Michael Koenig氏は「紙の代替として考えた場合、ページ、資料、チャート、グラフを簡単に切り替えることができない」点を挙げています。ハイスピードな講義を自認しているようなので、画面切り替えに時間のかかるKindleにはちょっと荷が重かったのかもしれません。結局、配布されたKindle DXは講義の予習に活用されたとのこと。ただ「一握りのパワーユーザ」は講義中もKindle DXで通したそうなので、どこの世界にもニュータイプがいるようです。
これだけではプリンストン大学の例と同様、アマゾンには残念な結果というだけなのですが、面白いのは「個人用の読書端末としてKindle DXを薦めますか?」という質問になると、学生の90〜95%が「薦める」と答えたこと。「結果から私が言えることは、電子書籍や雑誌、新聞を買って読むぶんには、アマゾンはとてもよくデザインされた製品を作ったということです」とKoenig氏。また同氏は、アマゾンがこれから教育市場に本腰を入れるなら、今回の調査結果が今後の改良に役立つだろうともコメントしています。電子書籍なんてまだまだと言う人がいる中、アマゾンは批判に耳を傾けつつ着々と普及に向けて準備しているのかもしれません。

講義のスピードへの対応はあまり良くないが、個人用として使う分には勧めたいという結果が出たのは興味深いところです。
つまるところ、よりストレスなく画面の切り替えができれば対応可能ということで、これは今後の教育機関向けタブレットPC市場への売り方を考えるにあたって、参考になる点かも知れません。また、学部・大学院など講義の内容によって見る資料も異なってきますから、その辺りも考慮した方がよさそうです。

今回kindleの評価を行ったバージニア大学ダーデンビジネススクールには、日本人学生が有志で作っているというWebサイトがあります。

院生の方が書いているブログもあるようですので、今回の件を是非記事にしていただきたいところですね。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
にほんブログ村