Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

職業指導(キャリアガイダンス)の義務化と職業大学(仮称)とのすみ分けは?

high190です。
中央教育審議会の大学分科会が、日本全国全ての大学及び短期大学で職業指導(キャリアガイダンス)の授業を導入させる方針で検討を始めたという報道がありました。


◇入社3年内の離職率35.9%
就職後すぐに離職する若者が増えるなど、学生の職業・勤労観形成が課題になっているとして、中央教育審議会大学分科会は、すべての大学や短大で「職業指導(キャリアガイダンス)」の授業を導入する方向で検討を始めた。科目として義務化するか、各大学に努力義務を課すにとどめるかなど、具体的な制度設計を急ぎ、早ければ来年度からの導入を目指す。【加藤隆寛】
同分科会の作業部会が「社会人として必要な資質能力を高めるためにも、職業指導を教育課程に位置付けることが必要」と提案し、14日の会議で大筋了承された。
分科会の委員からは「大学には本来(職業について)何らかの意図を持って入るはず」との意見も出されたが、「将来が見通しにくい社会構造になっている」などとして、入学してから職業意識の形成を図ることや、自分の適性を考えることの必要性を認める意見が大勢を占めた。
1〜2年次の選択科目などを想定しており、大学設置基準の改正なども視野に議論する。文部科学省によると、既に74%の大学が職業意識に関する何らかの科目を設置済み。分科会では、これらの授業内容を分析した上で、適切な授業のあり方などを探る。厚生労働省のまとめでは、05年の大学卒業者の入社3年以内の離職率は35・9%。

えーとですね、職業指導を教育課程に位置付けるというのは、確かに現在の不透明な社会に学生を送り出す大学側としても重要なことと思いますが、問題は「全ての大学・短大」で「義務化も視野に入れている」ということですね。それぞれの大学に特色があり、学部も様々なものがありますので、就職を想定する業界も大学によって大きく異なってくると思います。
教育課程上で義務化する、ということは職業指導の科目設置を必須にするという意味ですが、問題は科目で指導する内容がどの程度職業指導に役立つのか?ということだと思います。

(過去記事)仕事直結の授業を実施する新大学構想について、中教審の報告案(2009/06/24)

つい先日、仕事に直結する授業を実施する新大学構想について中教審が報告案をまとめているという記事を書きました。
職業指導の義務化は新大学構想と相反するような気がするんですが、そこのところを中教審の委員の方々はどう考えられているんでしょう?大学設置基準の改正も視野に入れているそうですが・・・
というか、企業や社会の変化のスピードと大学の教育内容は必ずしも一致しないと私は考えています。
だからこそ、大学側は社会や企業の変化に適用できる柔軟性が大切になってくるんですが、大学設置基準上で明確に規定してしまうと、各大学の創意工夫による柔軟性が損なわれてしまうのではないかと思います。分科会の分析結果がどのようなもので、最終的にはどんな結論を導き出すのか、興味深いポイントです。

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