Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

教育費に関する有識者会合での議事要旨から、今後の教育費の動向を読み解く

high190です。

日本学生支援機構が緊急募集した奨学金に応募者が殺到したという記事を先日書きました。

日本においても大学の学費は右肩上がりに上昇しており、設置者の経営努力も重要ですが、公的に教育費についての支援体制を構築することも今後の日本の教育を考える上で重要なポイントになります。先日開催された文部科学大臣有識者会合の第1回議事要旨が公開されました。あくまでも検討段階ではありますが、今後の教育費を巡る動向を先読みするには重要な資料だと思います。


(上記記事より、大学・大学院教育に関する箇所を抜粋)

<大学・大学院教育について>
○質の向上を目指していない大学というのは退場すべきであって、質の向上に努力している大学に対しては、国がきちんとしたサポートをしていくべき。
○博士課程への進学率は修士課程への進学率に比べて落ちてしまう。その理由は、26、27歳になって先がどうなるかわからず、給与の当てもない状況によるものである。そこで、日本国力増進のためにも、学生の半分近くに、例えば月十数万円サポートし、博士課程の学生の例えば3割、4割程度を支援すべき。
○この10年間ですべての分野で博士課程の進学者が減っているのは大変な問題。その理由として、アンケート調査によれば在学中の生活保障がないということ。このため、実際にアメリカがやっているように、ハーフタイム・リサーチ・アシスタント、つまり半日働いて、それに対するレーバーコストを払って、それで研究なり、授業が受けられるようなシステムを国のシステムの中に盛り込むことによって、アメリカの水準に若干は近づけるのではないか。
○大学に進学をする際、事実上、複数の大学に入学金を払って入ったり、新たな居住地のための投資など、入学に付随するさまざまなお金もあって、18歳時に極端に負担が大きくなるということが高等教育に関する進学を阻害しているのではないか。
○エリート教育、大学院教育をへの十分な投資をどう確保していくかということに関しても、議論が必要。

大学・大学院教育についてもいくつかの意見が出たようですが、共通しているのは国として教育をどのように支援していくのかということです。例えば、ハーフタイム・リサーチ・アシスタントの制度などは実効性がありそうですよね。これを経常費補助金とかの補助要件に入れてみるのも面白いかも知れません。このことに関する研究論文もあります。

アメリカの若手大学教員・研究者養成の現状と課題―TA・RA・PD制度を中心に―
(出典:日本大学文理学部人文科学研究所 第75号(2008年)研究紀要(PDF))

制度的に就学支援策を考えるのも大切ですが、公的支援として設置者にも何らかの経済的支援が必要なんじゃないのかな?と思っているのですがね。もちろん、競争的資金でもいいんですけど。ちなみに日本の大学の学費については、平成21年4月23日開催の第1回大学規模・経営部会にて配付された資料が参考になります。

もちろん個々の大学が経営を効率化させていく必要性があるでしょうし、無駄を省いて合理化していくことは企業だけではなく非営利組織でも同じことです。また、財務省国立大学法人の予算剰余金を「埋蔵金」と呼ぶなど、個々の大学だけではなく、国としての判断をどこがするのか?という大きな議論にしていくことが必要です。

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