Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

経済不況と高まる奨学金への期待

high190です。
昨今の経済不況に伴い、日本学生支援機構が緊急募集した奨学金に応募が殺到しているそうです。


昨年来の急速な景気の悪化を受け、大学などが設けた緊急の奨学金制度に学生の応募が殺到している。独立行政法人日本学生支援機構」(東京)の貸与奨学金には想定の倍の学生が応募。実際の給付者の7倍の相談があった大学もある。奨学金を受給してもアルバイトを余儀なくされる例もあり、就学の厳しさは増す一方。専門家は「奨学金などの充実に長期的に取り組むべきだ」と指摘している。
「応募者数は想定以上」。奨学金の貸付事業などを手がける日本学生支援機構の担当者は驚きを隠さない。経済危機を受け昨年末から今年2月初旬にかけて、奨学金の貸与者を緊急募集したところ、利子つきの条件にもかかわらず9千人超が応募。約56億円を貸し出すことになった。当初、応募は4千人程度と予想していたという。

当初の想定から2倍以上の学生からの応募があったそうです。それだけ今回の経済不況は学生への影響が大きいということですから、政府としても公的支出による何らかの就学支援策を検討する時期に来ているのではないかと思います。つい先日、文部科学省は教育費に関する有識者懇談会を開催するなど、政策的にどう対応するかの検討も始まっています。

国として教育にどのくらいのお金をかけていくのか、本格的な議論が必要です。ちなみにOECDの調査によると日本はGDPに対する教育費の公的支出の割合は調査された国の中でも最下位になるなど、もっと国として教育に対して補助をしてもいいのではないかとの議論があります。


高校奨学金の申請は少子化などでここ数年横ばい傾向だったが、毎日新聞の調べでは08年度、32都府県で増加に転じた。窓口には「解雇されたが奨学金を受けられるか」といった相談が増えている。
国は今年度の補正予算都道府県奨学金事業への緊急支援を盛り込んだ。しかし利用者の一時的な増加に備えるもので、貸与額を増やす目的ではない。
奨学金の併用を認めない都府県は「返還時の負担が重くなるため」と説明する。確かに大卒でも正社員への道が狭まり、卒業と同時に返還していくのは楽ではない。日本学生支援機構の06年度調査では、卒業後に高校・大学の奨学金返還を延滞している理由のトップが低所得(45・1%)だ。
だがそもそも日本では教育費の私的負担が突出して高い。経済協力開発機構の昨年9月の報告によると、国内総生産に対する教育費の公的支出の割合は調査した28カ国中最下位。「教育は国が担う」との意識が強い欧米との違いが際立つ。
子どもたちが学習の機会を失い、将来安定した生活を営めなければ、社会の基盤も危うい。返済義務のない給付型の奨学金を増やしたり授業料の負担軽減を進めるなど、教育のセーフティーネットの拡充が急がれる。

就学機会の損失は、国にとっても人材育成の観点で大きなマイナスになります。国として次代を担う人材をどのように育成していくのかを考え、必要な公的支出をもって教育を行っていくことが必要なのではないでしょうか。

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