Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

国内最古の京都大学「吉田寮」の建て替えを大学側が自治会に提示

high190です。

国内最古の学生寮である、京都大学吉田寮
建設されたのは1913年だそうで、90年以上の歴史がある建物です。京都大学の色々な歴史を感じてきた建物も、耐震化が必要とのことで建て替えの計画案を大学側が提示し、自治会側もその意向を受け入れるようです。


現存する学生寮としては国内で最も古く、かつては学生運動の拠点だった京都大の「吉田寮」(京都市左京区)について、大学側が寮生らでつくる自治会に対し、具体的な建て替え計画案を初めて示したことがわかった。
建て替え計画は30年以上進んでいなかったが、建築後1世紀近くたって老朽化、耐震性に懸念が出てきたことから、これまで大学側に反発してきた自治会も交渉に応じている。
大関係者によると、吉田寮は1913年(大正2年)建設。木造2階建て3棟で定員約150人。現在の寮費は月約2500円で、自治会が運営や入寮者の選考などをしている。
大学の計画では、2010年度に寮西側の旧食堂棟を取り壊し、現在の寮生と留学生約180人が入居する「A棟」を新築。その後、寮を取り壊して「B棟」を新たに建て、全体の収容人員を約400人に拡充する。
このうち、A棟新築については、6月までの合意を目指す大学側に対し、自治会も「安い費用で住める寮の定員が増えるのは、ありがたい」と前向きで、寮費や入寮期限の設定などを巡って話し合いが続いている。
ただ、寮の取り壊しが前提となるB棟建設に関しては紆余(うよ)曲折が予想される。「学生の安全が第一。ぜひ、実現したい」とする大学側に対し、自治会は「寮はライブや演劇の会場となるなど、学生の文化施設の役割を果たしてきた。愛着を持ち、残してほしいという声も大きく、建て替えは慎重に検討したい」としている。
吉田寮は、1960年代の大学紛争で闘争の主要な舞台となり、警察の家宅捜索を受けたこともある。建て替え計画は、在寮者名の確認や在寮期限の設定などを求める大学側に学生らが反発、決裂を繰り返してきた。ところが、耐震性への懸念が大学内外から相次ぎ、大学側は昨年11月、改めて建て替えの意向を表明。今年4月、計画案を示した。

それぞれに主義・主張はあると思います。大義名分があっても歴史のある建物を取り壊すのは、大学の歴史の一部をなくしてしまうようなものですから、どうやって遺構を大学内に残し、かつキャンパスの文化として新しい建物との融合を図る必要があります。
このように、大学のキャンパスの新設・改築は、単なる新規工事ではなくてリノベーション的な要素を持つものであると考えられます。たくさんの人が学生時代の思い出を残して卒業していくキャンパスだからこそ、何がしかの形で過去の歩みを記録していくことが求められているのです。

(過去記事)大学の歴史的建造物をどのように保護するか(2007/12/18)

ただ、逆説的に考えれば、ドラスティックに変革を求めている大学の場合、このような意見は執行する側からすると“抵抗勢力”ということになります。大学改革のために既存の建造物を一掃して新たな戦略を構築する、という観点から考えれば、いかにして抵抗勢力の主張を聞きながら、自らの目的を達成するかということにかかってくるため、合意形成が改革の大きな鍵を握ることになります。その際には建物の遺構を学内に展示したり、新しい建物の一部に活用するなどの案が出てきます。

あえて今回は壊す側・壊される側の両面から吉田寮の改築について考えてみました。大学においても大学と学生の意見が相反するのはよくあることですが、双方の視点から物事を考え、何が最もよい結果をもたらすのかを常に考えておきたいものです。

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