Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

起業家育成の可能性と社会的な取り組みの必要性

high190です。

経済産業省が大学での起業家教育の促進を目指した新組織を設立すると発表しました。
しかしながら、起業家は大学の教育で育成することができるものなのでしょうか。

経済産業省は、大学での「起業家教育」を促進するための組織「大学・大学院起業家教育推進ネットワーク」を5月に設立する。
全国の大学・大学院で開かれている起業家講座に活躍中の起業家を講師として派遣するほか、ベンチャー企業の仕事を体験するインターンシップ制度を設ける。特色ある授業は「モデル講座」に認定し、見学会も開く。今年度の予算は5300万円。サッカーJリーグ「アルビレックス新潟」を躍進させた池田弘・会長らが運営に助言する。
設立に先駆けた大和総研の調査では、全国の大学(回答校536校)の46%で何らかの起業家教育が実施されていることが判明。だが、「実践内容に、ばらつきが目立った」(同総研)という。
調査の報告書によると、米国の大学・大学院の起業家教育の講座数は5千以上で、この20年で約20倍に増加。日本で起業する人の比率が米国の約半分という統計もある。同省担当課は「日本の起業家教育は底上げの余地があり、これを推進することが日本経済の活性化につながる」とみている。

起業家教育を底上げすることが起業家の育成に繋がる、ということにはちょっと疑問に感じる部分があります。例えばシリコンバレーで起業家がたくさん生まれている理由は、学生が起業に向かう環境が整備されているからなわけで、失敗をマイナスに捉えずチャレンジ精神を買うような環境でないと難しいでしょう。日本での起業家に対するイメージというものは現在のところ、あまり良いものではないのではないでしょうか。起業家の代表的存在であった堀江貴文氏に対するネガティブキャンペーンにしても、起業家に対してあまりよく思っている人がいないことを示すことなんではないかと。
そもそも、大学だけでは起業家を生み出すことはできません。企業や中高レベルからの協力体制がないと本当の起業家教育は難しいのではないかと。起業して失敗した時のリスクを個人ではなく社会が負担できるような仕組みを作ることができれば、起業家教育が日本でも成り立ってくるのではないかと思います。まずはそこからスタートすべきでは?

大学だけでやるのではなく、社会全体の取り組みにしていくことがとても重要。

(2009/04/22追記)

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