Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

来年度から、国立大学が私費留学生を増やすと運営交付金が増えるらしい

high190です。
文部科学省は来年度から、国立大学が私費外国人留学生を増やした場合に、運営交付金を増額することにしたそうです。留学生30万人計画の実施にあたって、政策面からアプローチし始めたということでしょうか。

留学生を増やせば、使える予算も増えます――。文部科学省は、国立大学が私費留学生を増やした人数に応じて国の運営費交付金を多くもらえる仕組みを作り、各大学に通知した。09年度から実施する。条件を良くすることで福田前首相が提唱した「留学生30万人計画」の実現につなげたい考えだ。
交付金のうち、各大学の意欲的な取り組みに応じて算定される「特別教育研究経費」の一つに、「留学生受け入れ促進等経費」を設けた。国が奨学金を出す国費留学生は、従来も受け入れ人数をもとに交付金を出していたが、私費留学生についても交付金措置によって教育面などの支援を促すようにした。
文科省の担当者は「私費についてはこれまで各大学の努力でやってもらっていた。支援は、留学生の受け入れを増やすインセンティブと考えている」と話す。
09年度の場合、07年度の留学生数や過去の平均増加率を基に、これだけ増えるだろうという「想定値」を文科省が各大学に提示。あらかじめ想定値分の交付金を措置しておき、達成できないと頭数に応じて返納してもらう。
例えば東京大は、学部や大学院への私費留学生が07年度の1345人より、138人増えると想定。学部正規生は4万2千円、大学院博士課程正規生は16万8千円といった単価で計算し、約1600万円を措置する。
30万人計画は、大学の国際化などを進めるため、福田前首相が昨年1月に提唱。昨年5月1日現在で12万3829人(過去最高)だった留学生を2020年をめどに30万人に増やすことを目標にしている。

政策の実現のために、各国立大学法人に対して資金的援助でアプローチする手法を文部科学省は採用した訳ですね。ただ、実務面から考察すると留学生を増やすことには一概に資金的援助のみでは難しい側面があります。まず事務的な問題。留学生を受け入れる場合、入国管理局との折衝、文部科学省への報告等々、相応の事務処理量が求められます。人を手配する関係上、運営交付金を増額するといっても、各大学にとってはそれほどのメリットはないということです。
資金的な援助は必要であると考えますが、それだけで留学生の受け入れが増えるのでしょうか?正直な話、それは短絡的な発想であると言わざるを得ないのではないでしょうか。これまで資金的援助がなかったので予算措置したといっても、目標値を達成できなければ返納を求めるのであれば、国立大学側からすればいらぬ事務を増やされただけなのではないでしょうか。インセンティブ、という聞こえのいい言葉を使っても実態に即していないのであれば何の意味もありません。東京大学を基準に考えても日本の高等教育の底上げには繋がらないでしょう。

以上、私見を述べましたが、国立大学法人の職員の方々及び文部科学省の官僚の方々はこの記事をご覧になって何か感じ得るものがありますでしょうか?もし、少しでも感じることがあったのなら是非コメントをいただければと思います。

にほんブログ村 教育ブログ 大学教育へ
にほんブログ村