Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

Staff Developmentのカタチ

high190です。
私は大学卒業後にすぐ就職したプロパーの大学職員です。ですので、同期や同年代で企業に勤めている友人から人事研修の話を聞くと、「企業ではそれだけお金かけて人材育成してるんだ…」と驚かされることがよくあります。私の極めて少ない経験からしか申し上げることはできませんが、大学業界(というか教育業界?)って今でも徒弟制的な部分があるんじゃないかと思うんですよね。仕事はやりながら覚える、とか見て覚えるとか。知的ノウハウの蓄積や共有があんまりできていないというか。

ここ何年かの間で大学業界に浸透した“Staff Development(通称:SD)”ですが、まずは小規模で自主的な勉強会から始めてみたいものです。今日はそんな事例を一件ご紹介します。

(上記記事より一部抜粋)


さて、では具体的にSDって何やっているの?となると、実はこれほど答えが微妙なものはない。
というのも、FDは授業改善のための組織的な取組みとして、授業評価など学生への教育効果を高めるというひとつのゴールに向かっていくことがてきるのだが、SDの場合は職員の能力開発というだけで、すべての職員に共通するゴールを作りづらい。
あえて共通のゴールを作るなら、大学をより良くしていくための能力開発となるが、それはどの会社・組織も当たり前にやっていることなので、あえてSDという言葉を使うことが若干恥ずかしい。
具体的なSD事例で、注目すべきほどのものを私はまだ知らない。

「大学、改革してみませんか」のbafana-bafanaさんの記事。「まだ、注目すべきSD事例はない」とは、確かに現状のSDは企業での人事研修に相当するものですので、SDという言葉を独自に表せるものではないのかも知れません。

ここでbafana-bafanaさんが行った学内勉強会の実施例をご紹介します。

(1)若手勉強会の目的
新人が個別業務に張り付いてしまい、大学全体について学ぶ&刺激を受ける場ができていなかった。
モチベーションの向上と他部署の若手職員との接点を持たせる場を設定する必要があった。

(2)実施の概要

    1. 毎週1回の全5回。
    2. 勤務時間外に有志で実施。
    3. テーマは規程集の読み込みや大学案内の比較、入試動向など。

(3)実施の流れ

    1. とりあえず仲間を2人見つける。3人いれば会として成立する。
    2. ゴールを設定する。実施することで何の実現を目指すか。
    3. 仲間と内容を検討する。極力堅さを省き、参加へのハードルを下げる
    4. 各部課長に企画案を示し、実施の了解と課員参加の協力を依頼する。(該当日は残業を抑えてもらう等)
    5. 講師役を該当課長に依頼。
    6. 実施。仕事の関係で参加者が少なくても気にしない。
    7. 勉強会後の懇親の場を用意。これに誘われて途中参加してくれる人も。

上記のご指摘のとおり、新人であればあるほど、個別業務の負担が大きいのはうちでも同じ。その中でモチベーション向上と人材の交流する場所を作ったのですね。個別業務に忙殺されていると全体が見えず、そうした意識が組織に広がれば組織は硬直化し官僚化します。テーマとしては個々の部署の業務内容についてのレクチャーというレベルでいいんですね。


個人的に「これはポイントだ」と思ったのは、3人いれば会として成立するということ。逆に言うと自分を入れて3人の集まりを作ることがとても大切だということです。これがなければ何も始まりませんね。内々に根回しして実績を積み上げていく中で徐々に他の人を巻き込んでいく(果ては上司も講師役として)というやり方なら、うまく行きそうな気がします。

大学をよくするためにも、こういったお話をもっともっと大学職員間で共有していったらいいのではないでしょうか。私も学内勉強会を実施でき次第、このブログでご報告したいと思います。

bafana-bafanaさん、貴重なお話を聞かせていただき、大いに参考になりました!ありがとうございました!

【追記】
ちょっと書き足したくなったので追記します。こうした学内勉強会を実施するということで得られるものは何でしょう?私が思うには、「自由闊達に意見できる空気」みたいなものではないかと思います。また、大学という教育関係の仕事をしている中で互いに切磋琢磨する機会を作ることがとても重要だと私は考えます。大学には、学生が学ぶ環境を整える役割がありますけど、同時に学ぶということに対して教職員も一生懸命であることということは大切だと思いませんか?「うちの大学には熱い先生・職員がいる!」という印象を学生に与えられるだけでも、学生の勉強へのインセンティブになる可能性がありますよね。何といっても学生にとっては、大学の教職員はある意味で最も身近な「職業人」なのですから。大学職員は学び続けて研鑽し続けなければならないのです。自分への自戒も込めて。

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