Clear Consideration(大学職員の教育分析)

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駒澤大学が資産運用損失を154億円計上。何故こうなってしまったのか?

high190です。
駒澤大学が資産運用で154億円の損失を計上したそうです。今日はこのことについてのニュースが話題になっているようです。


駒沢大学(東京都世田谷区)が資産運用で始めたデリバティブ取引で、150億円を超える損失を出していたことが18日分かった。損失穴埋めのため今月、キャンパスの土地建物やグラウンドを担保に多額の銀行融資も受けている。大学側は事態を重く見て、17日付で調査委員会を設置。文部科学省も報告書の提出を求めた。
世界を覆う金融危機の影響が、大学経営にまで広がった。大学の説明によると、問題のデリバティブ取引は、主に金利などを交換する「金利スワップ」と「通貨スワップ」の2種で、昨年度、外資系金融機関2社と契約したという。契約額は、日本円で約100億円だった。少子化で学費などの収入減が見込まれるため、「実のある資産運用をするべきだ」と始めたという。経理担当者が窓口となり、大学理事会も了承した。
ところが、昨年後半以来の金融危機などで時価が一気に値下がり。今年3月末の昨年度決算時点で、評価損は53億円を超えた。その後も含み損は増え続けたため、結局、先月で取引を解約、損切りすることに決めたという。確定した損失額は約154億円。
穴埋めのため、大学は今月2日の臨時理事会で、みずほ銀行から110億円の融資を受けることを決定。不動産登記簿によると、大学本部にほど近い深沢キャンパスのほか、世田谷区内にある野球部グラウンドなど複数の土地建物を共同担保に、4日付で120億円の根抵当権が設定されている。
さらに、17日の臨時理事会で、経理担当者の責任が議論されたが、まず、契約のいきさつや商品の詳しい内容などを調べるため、調査委員会を設置。「損失額があまりに大きく、説明責任がある」と判断したという。委員長には、外部の弁護士が就く予定だ。
昨年度末での同大の資産総額は約940億円。うち土地建物などの基本財産は580億円、現金預金は127億円だった。文科省には、今月中旬に報告した。大学の資産運用は、各大学の独自の判断で行われるが、文科省は「運用はリスクを十分検討したうえで、安定性を重視すべきだ」と話している。
同大の関係者は「資産規模に対し投資額が多すぎた。大学の経営陣には金融商品に詳しい知識を持った人がおらず、認識の甘さがあった面は否めない」と話している。
少子化などで大学経営が厳しくなる中、投機性の高い資産運用を始める大学は増えているといい、専門家は「損失が明らかになるのは、氷山の一角だ」と警鐘を鳴らす。
日本私立学校振興・共済事業団によると、05年度の集計では、全国約650の大学・短期大学のうち、少なくとも75大学がデリバティブ取引を行っていた。

154億円!結構な金額ですよね。校地・校舎を担保に融資を受ける、ということが今後学生募集に影響を及ぼす可能性も少なくありません。
今回の問題点のひとつは「意思決定のスピード」にあると私は思います。

ところが、昨年後半以来の金融危機などで時価が一気に値下がり。今年3月末の昨年度決算時点で、評価損は53億円を超えた。その後も含み損は増え続けたため、結局、先月で取引を解約、損切りすることに決めたという。確定した損失額は約154億円。

3月末の決算時点で取引を解約できていれば、100億円は損失計上せずに済んだと思うのです。取引を解約できなかった理由を大学の内部的な話から勝手に推測すると、理事会に「解約する」という選択肢がなかったのではないかと。「大学の経営陣には金融商品に詳しい知識を持った人がおらず」とありますが、そもそもこの金融商品を用いて資産運用することを決議したのも理事会なんですよね。そう考えると何を根拠に決定しているのか?という疑義があるのは致し方ないことだと思います。
ちなみにこんな過去記事を見つけたのでご参考までに。

ファイナンシャル・リテラシー、という言葉が今回の問題にはぴったり当てはまると思うのですがいかがでしょう。
ただ、今の私立大学の台所事情として資産運用専門の人材を抱えられる余裕がないところがほとんど(恐らく、ですが)であると思うので、こうした問題が今後他大学でも起こりうる可能性は十分にあります。そう考えると現在の金融危機も大学に無関係ではないことがよく分かります。

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