Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

採用担当者から見た大学の就職支援とは

high190です。
私自身、曲がりなりにも大学教育を受けて社会に出ている以上、「大学卒業」という一定の質的保証を受けるだけの権利と義務があると考えています。最近では大学進学率の上昇から、単純な大卒の意義は薄れてきていると感じますが、送り出す大学側からすると社会に対して大学という高等教育機関で教育を受けた人間を送り出すという責任を負っていることは忘れてはならないことです。

さて、大学は学生を教育して社会に送り出す必要がありますが、実際問題として大学の就職支援は企業の採用担当者の目にはどのように映っているのでしょうか。経済産業省が提唱している「社会人基礎力」など、大学で学んだことに加えて社会人として必要なスキルが定式化されてきている昨今、採用担当者の意見は重要度を増していると考えます。


求める能力の上位には「コミュニケーション能力」「前に踏み出す力」「チームで働く力」「適応力」「社会常識」、足りない能力の上位には「社会常識」「コミュニケーション能力」「前に踏み出す力」「基礎的な学力」「考え抜く力」と、ほぼ相関した並びとなっている。

求める能力と足りない能力がほぼ相関しているとのこと。
それだけ、このような能力を持っている学生とそうでない学生の差は大きいということです。ちなみに上記で抜粋した能力、まさしく社会人基礎力とぴったり一致するんですよね。

数多くの採用担当者のコメントを分類すると、「大学は就職ノウハウの教育ではなく、キャリア教育をしっかりして欲しい」「大学はキャリア教育以前の基礎的学力をしっかり身につけることが先」「キャリア教育は本来大学がやるべきものではない」「大学だけに責任を押し付けるのは無理。学生の能力低下は社会にも責任がある」といった内容に大まかに分けられる。
確かにどの考えも一理ある。理想を言えば、「大学以前の段階で社会的常識を身につけ、大学生として基礎的学力、教養を身につけた上で、就職ノウハウではない本当のキャリア教育を受けてしっかりした就職観を持って就職活動に臨む」ということだろう。しかし、それがいかに現実とかけ離れているかは周知のとおりである。

現実問題として、大学入学後に学生を教育するといっても時間は4年間しかないわけで。しかも学生が就職活動を開始するのは3年次からですから、実質的には2年弱の間に大学卒業程度の教養と社会的常識を身に付けていないといけないということになります。そうなってくると必然的に就職支援としてのキャリア教育だけではなく、大学のカリキュラム自体にキャリア教育を埋め込んで実施しないと就職活動までには間に合いません。

そういった意味では企業の就職担当者は就職支援だけを見ているのではなく、企業で通用する能力を有する学生を育てられるカリキュラムで教育を行っている大学はどこなのかを探っているとも考えられます。いわゆる名前だけではなく、本当に実力のある学生を育成することにこそ、理想的な大学の就職支援策の答えが隠れているような気がします。そのためにPBLを実施するとか色々な切り口があると思いますが、ここにこそ各大学の独自性が反映されなければいけないように私は思います。

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