Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

カレッジスポーツとUIで大学を強くする

high190です。
カレッジスポーツ、スポーツ振興は大学の力を強くするといいます。特にアメリカの大学ではユニバーシティアイデンティティ(UI)の考え方をキャンパスグッズに反映させるなどして、大学力を高めています。

カレッジスポーツは「愛校心」を育む

「愛校心」を高める代表的な策として「カレッジスポーツ」が挙げられる。アメリカンフットボールのシーズンになると、週末の度に大学内のスタジアムは賑やかになる。学生はもちろんのこと、地域住民を含めたビッグイベントになっている。お揃いのウェアを着て母校を応援する中で、学生の「愛校心」は無意識に醸成されて行く。ちなみに、カレッジフットボールの名門ノートルダム大学は、収容人数が8万人を超えるスタジアムが超満員になり、プロスポーツ以上といえるほどの人気を誇っている。多額のチケット収入はもちろんのこと、アメリカ4大ネットワークのNBCから膨大なテレビ放映権料も入ってくる。グッズ販売の規模も桁違いで、ホームゲームのある週は、ギフトショップの売上が2億を超えると言われており、収益面で大学に多大な貢献をしている。


カレッジスポーツは「収益」をもたらす

このように、アメリカのカレッジスポーツは、チケットやグッズなどの「一時的な収益」と、寄付による「継続的な収益」の両方をもたらしている。基金規模の上位校を見ると、スポーツ名門校が多数ランクインしている。カレッジスポーツの影響力の大きさを認識している大学経営者は、その効果を最大限に発揮するため、「ブランド戦略」を緻密に展開している。スクールカラーやユニフォームデザイン、チーム名を大学全体で統一し「大学」をアピールするための、視覚効果策を徹底して講じている。さらに大学のブランドイメージを汚す種目が出ないように、全ての種目に強化資金が行き渡るような仕組みも整えている。具体的には、アメリカンフットボールやバスケットボールなどの人気スポーツで得た収入を大学がプールし、他の種目に再配分して全体的な底上げを図り、個別の「競技」が前面に出るのではなく「大学」が前面に出るように心がけている。

収益面を大学のブランド向上に役立てるという思想。確かにこれは日本の大学には無い視点です。

カレッジスポーツに関与しない日本の大学

一方、日本では、大学が主体となってカレッジスポーツを運営する仕組みになっていない(一部の例外を除き)。大学から活動資金は提供されるものの、それだけでは不十分であるため、各部活動単位で資金集めを行っている。人気種目は比較的容易に資金を集められるが、そうではない種目は部のOB・OGからのカンパに頼りながら、ギリギリの運営を行っている。その結果、各部活動の独立性が強くなり、大学組織の一員でありながらも治外法権となっている。ユニフォームデザインやチーム名が大学として統一されていないことも珍しくない。競技ごとのOB・OGの結束は非常に強くても、それが「大学」と結びつき、大学の大きな財産、財政基盤となっていることはほとんどない状態である。


カレッジスポーツは大切な「資産」
 
カレッジスポーツは、本来大学の持つ貴重な「資産」のはずである。事実、アメリカでは大学経営に大きく貢献している。日本においても「箱根駅伝」のように、人々の関心を惹き付けることに成功した事例は幾つか存在している(ビデオリサーチ社によると、2008年の第84回大会は関東地区で25%を超える視聴率となった)。大学に財務面の独立が強く求められている今日においては、こうした「資産」を有効に活用して資金を獲得することは、経営上欠かせない視点である。日本の大学はカレッジスポーツの価値の高さを認識し、各部活動単位に分散してしまっている「資産」を集結し、大学全体の活性化に結び付けて欲しい。日本においても、「カレッジスポーツ→愛校心→寄付→大学の活性化→国力の向上」というモデルが実現することを切に願っている。

もっと大学スポーツに力を入れることで、大学の魅力を高めようという取り組み。
最初から寄付金を増やす、という目的ではなく、大学を面白いものにして在学生への教育サービスを向上させることこそが大切だと思います。

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