Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

銀行と大学の提携強化は経営強化なのか?

high190です。
フジサンケイビジネスアイに大学と銀行の提携が加速しているとの記事がありました。

銀行業界が大学とのビジネス展開を加速させている。知的財産権やデザインなど優れた技術をもつ大学と企業を引き合わせたり、設備の増強に積極的な大学に長期融資を実施したりしている。大学をめぐる規制緩和や産学連携を推進する国の後押しに加え、少子化で経営基盤の強化を急ぐ大学側の思惑も背景にある。(柿内公輔)
三菱UFJ信託銀行は昨年12月に、東京電機大学との間で知的財産権に関する契約を結んだ。同大が開発した半導体原料の品質測定装置などに関する特許を信託化して、三菱UFJ信託が管理。特許に興味のある企業と使用契約を結んでライセンス料を受け取る。
知財信託は2004年の信託業法改正で認められた。三菱UFJ信託は山梨大学とも燃料電池の特許で契約を結び、今年4月には九州大学大学発ベンチャー企業と金属加工技術に関する特許権を信託化。経済産業省知財の産学連携を推進しており、三菱UFJ信託では「産学の橋渡しで役立ちたい」と話している。
環境問題に関連した産学連携に熱心なのは三井住友銀行だ。同行は環境省などと共催で、企業が環境ビジネスを競い合うコンテスト「エコ・ジャパン・カップ」を毎年開催しているが、応募者の中から「大学と組めばもっといい研究開発ができる」という企業を選んで、東大や慶応大などの大学を紹介している。
また、りそな銀行は4月から、自社の製品やショールームに斬新なデザインなどを求める企業に、大阪芸術大学など関西の芸術系大学7校を紹介するサービスを始めた。芸術分野での産学連携は珍しいが、りそな銀は「デザインが製品価値において重要な要素という認識が高まっている」と狙いを話している。
一方、三菱東京UFJ銀行と日本政策投資銀行は今年、東京農工大学に動物病院の増築費用など約5億4000万円を融資した。国立大学法人の民間からの長期融資は従来厳しい制限があったが、2005年の政令改正で、収入を直接返済原資にあてられる施設にも認められるようになった。農工大では病院の診察料を返済にあてる方針だ。
一風変わったところでは、遺言信託を活用し、大学へ私財を寄付する遺贈サービスも注目されている。中央三井信託銀行住友信託銀行みずほ信託銀行などで扱っており、「遺産を母校で役立ててほしい」というOBからの問い合わせが増えているという。
さらに海を越えて、外国の大学との連携を模索する動きも出てきた。新生銀行インド工科大学と4月、IT(情報技術)分野で提携。新生銀ではシステム部門に優秀なインド人技術者を抱えるが、同行のシステム技術を学べる講座をインド工科大に開講する。
銀行と大学が急接近しているのは、産学官の連携や社会貢献を下支えするとともに、入学希望者が定員を下回る「大学全入時代」を迎え、各校とも財務基盤の強化や経営の多角化を意識していることが背景にあるようだ。

記事には「大学全入時代を迎え」とありますが、実際問題としては18歳人口の減少に加えて私立学校等経常費補助金が減額されているということもあります。私学事業団のWebサイトには経常費補助金の予算額が記載されていますが、前年度に比べても減額されているのが分かります。


ちなみに私学事業団は文部科学省の外郭団体ですので、政府のメッセージとして「私立大学の皆さん、国に頼る時代は終わりました。これからは経営の独立性と健全性が重要ですよ」と大学に伝えている訳です。つまりは大学が独自に生き残るための収入源を確保しなければ、経営が立ち行かなくなるということです。
そんな時に大学と手を組みやすく、財務的なノウハウを持っているのは?当然銀行ですよね。だから、「経営強化」という言葉はしっくりこないんですよね。もし、これがマッキンゼーとかボストンコンサルティングなんかのコンサルティングを受入!だったりしたら、経営強化だと思いますが。

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