Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

入学前教育を大手塾にアウトソーシング

high190です。
明日はいよいよ大学入試センター試験です。受験生の皆さんにとってはとても重圧のかかる2日間だと思いますが、それぞれがベストを尽くせることをお祈りしています!ちなみに今年は本学もセンター入試の会場校なので2日間とも出勤です。センター入試の報道がピークを迎える中で、入学前教育に関する報道もあります。センターが迫っているということは、大学にとっては既に合格が決まっている人たちへどのように準備してもらうか手を打たなければならない時期でもある訳ですね。
ただ、入学前教育を実施したくともノウハウを持っていないため、なかなか手が付けられない大学も多くあることでしょう。そんな中、大手塾と大学が連携して入学前教育を行うという報道がありました。

大学入試センター試験が目前に迫る中、AO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試で早々と合格した高校生たちには、「大学に入学するまで、学力が低下してしまうのではないか」という懸念がある。
そこに目を付けたのが大手の進学塾。大学と連携しながら、学生の入学前教育を充実させようという取り組みが始まっている。
「順調に課題をこなしていますか」「そろそろ提出期限ですよ」――。
大手進学塾「東進ハイスクール」(東京都)のスタッフたちは今、AOや推薦で合格した高校生の自宅に、進学予定の大学名を名乗って“激励電話”をかけている。合格者が遊びで家を空けていることもしばしばで、何度も電話をかけ直して、本人に直接念を押すことを忘れない。
東進ハイスクールが、大学と連携して、AOや推薦で合格した高校生向けの入学前教育を始めたのは2000年度から。数学は、基礎的な計算力を鍛えるコースから一次変換を盛り込んだ難易度の高いコースまで、英語の場合はリスニングや長文を要約するコース、物理や化学では、高校までの総復習などと19のコースを設けている。毎年12月下旬から翌年3月まで、東進ハイスクールの講師による講義を収録したDVDとテキストを発送し、課題の提出を毎回求める。スタッフが随時電話をかけて学習状況をチェックしているため、課題の提出率も昨年度は93・8%に上った。
提携先の大学も00年度の1大学から、現在は国立の4大学や、医歯薬獣医学部系の27私大など約100大学に上り、約2万人の高校生を指導している。
東進ハイスクールの麻柄真治・大学営業部副本部長補は「AOや推薦で合格した高校生が増え、学生の学力が入学までに低下してしまうことを大学側が懸念している」と説明する。
文部科学省の調査では、03年度にAO入試を実施したのは337大学685学部で合格者は2万6069人。それが07年度には454大学の1047学部で、合格者も4万4232人に急増した。提携先の一つで京都府内の私立大学担当者は「早めに合格した学生を遊ばせず、学力の向上に役立てたい」と狙いを語る。
立命館アジア太平洋大(大分県)に5人程度の現役高校生の推薦枠を持つ進学塾「早稲田塾」(東京都)でも、同大に推薦合格した高校生に対し、入学までの数か月間、英語などを受講させている。3月下旬には、都内私立女子大のAOと推薦の合格者約120人に、日本史と世界史の復習やリポート作成方法を指導する予定。すでに同様の依頼が他大学からも来ており、今後も積極的に手がけていく方針だという。

入試形態が変化し、一般入試を経ないで大学に入学する人が増えてきている以上、大学側としては学生の学力レベルを維持向上させるために入学前教育が必要なのです。(私は私立大学の付属校に通っていましたが、学年の約半分はエスカレーター式に大学へ進学できるシステムでした。その反面、大学からは内部進学の学生は学力で劣ることから高校側に何らかの措置を求めてきているとお世話になった先生から聞いたことがあります。その問題と入学前教育は本質的には同様のものなのだと思います)
入学から約半年ほど前に合格が決まっているのならば、その期間を有効に活用することで入学後のフォローが出来ることから入学前教育の充実化は昨今の大学を取り巻く環境から考えても必要不可欠なものであると私は考えます。指定校推薦やAO入試を早期の入学者確保という経営的視点だけで見るのではなく、入学前にできることがたくさんあると発想を転換させるべきです。そうでないと合格者にとっては半年分を無駄に過ごしてしまうことにも繋がりかねません。
入学前教育を「面倒なもの」として捉えるのではなく、大学の発展に繋げていくことこそが入試制度と入学前教育をマッチングさせられる最大のポイントではないでしょうか。最近ではeラーニングも導入しやすくなってきていますので、費用対効果を考えて個々の大学が独自性のある入学前教育を実施していければと思います。

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