Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

2007年全国大学生調査で浮かび上がる、現在の大学生像

high190です。
日々、大学で学生と接しているとよく感じることがあります。目的意識を明確に持てず大学で学ぶことに意味を見出せない学生、講義内容について不満を持ちながらも大学を続けるしかないと感じて勉強へのモチベーションを失ってしまった学生、多くの場合は大学と学生の間のミスマッチが原因です。学びたいと思っていても、自分が学びたい内容の講義がないなど、大学教育のあり方や高校までの学習についてなど問題は複合的なものです。

大学生の4人に3人は「自分で勉強するより、必要なことはすべて授業で扱ってほしい」と考え、授業内容では「最先端の研究」よりも「学問の基礎」を重視している学生の方が多いことが18日、東大研究グループによる調査で分かった。
授業と直接関係のないことを、独自に学ぶのは少数派であることも判明。高度な専門知識を自ら習得するという学生のイメージからは程遠く、受け身の傾向の強い現在の学生像が浮かび上がった。
調査は今年、全国の国公私立127大学の協力を得て実施。約4万5000人の学生が回答した。
調査結果によると、意味があったと思う授業は「教養・共通教育」が44%、「専門教育」は59%。その内容については複数回答で「学問の基礎を教えてくれた」がトップの55%、「実践的な知識や技能」が50%で「最先端の研究成果」は14%だけだった。

全国大学生調査を実施しているのは大学経営・政策研究センターです。公式Webサイトに詳細な資料が掲載されています。

東京新聞の記事を読むと、「現在の学生は受動的で主体性がない」といった受け取り方ができますが、別の視点から考えると現在の学生の状況に大学側が対応できていないとも考えられます。私は学生が勉強したい内容が分からないといった質問に対して、大学側が詳細に説明することが理想的であると思いますが、業務面での負担や大学教育でそこまでするべきなのか、といった問いに対して明確に反論できる根拠が見当たらないのも事実です。

また、教育再生会議では高等学校の卒業者が大学を受験する資格としての「高卒学力テスト」の導入検討を始めました。

政府の教育再生会議が大学入試改革の目玉として、進学志願者への「高卒学力テスト」導入の検討に入る。背景には、大学全入時代の到来をにらみ、入学者の学力低下傾向に歯止めをかけなければ、最高学府にふさわしい教育を行えなくなる大学が拡大するとの危機感がある。
改革素案が「大学入学時に必要な学力が備わっていない学生が増加」していると指摘するように、大学教員の間から「九九さえできない学生もいる。そんな学生に何を教えればいいのか」(国立大准教授)との声が聞かれる。
再生会議関係者は「誰でも入れる大学にも助成金という名の税金が投入されている。大学淘汰を促して『質』を担保し、国際競争力の基盤となる人材を育成することが必要だ」と指摘する。
ただ受験生の負担が増すことへの批判が広がる可能性もあり、第三次報告に盛り込まれても、直ちに実現に向かうかは見通せない。
文部科学省の調査によると、高校で学ぶ内容を大学で教える「補修」は二〇〇五年度で二百十校と全体の約三割にも及ぶ。一方、少子化が進む中で大学側は学生の囲い込みに躍起。定員割れしている四年制私立大は全体の約四割に上っているとされる。大学進学のハードルを上げる高卒テストには、大学経営者から反対論が噴き出すことも想定される。

総合的な教育改革を実施しなければ、現在の大学で起こっている問題は解決できないものでしょう。また、政府方針を受けて各大学ごとに教育内容を充実化することが必要です。全国大学生調査の調査結果を元に、各大学が再度教育内容の再検討を行う必要があると思います。