Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

学生が主体となって「減災」

high190です。
昨晩から今朝方にかけて、台風9号が関東地方を通過していきました。今回の台風、強い勢力を保ちながらゆっくりと移動していましたので、被害が拡大しそうです。
ところで、台風だとある程度の被害予想は可能ですが、地震などの災害では予測も困難なだけに被害も甚大になりやすいものです。大規模災害に対しては日頃からの備えが重要とされていますが、実際のところ、意識して取り組んでいる人は少数でしょうね。そうした現状を鑑みて、「減災」の啓発活動を実施している学生たちがいます。

地震に備える「減災」活動が学生の手で広がる。
「みんなの住む宮城県の世界一は何だと思う? 大地震の発生確率なんだよ」
宮城県蔵王自然の家で8月上旬に開かれた「こどもぼうさい・げんさいキャンプ」。東北福祉大学仙台市)のボランティアサークル「with(ウィズ)」のメンバーが、参加した小学生15人に問いかけると、驚きの声があがった。
キャンプは1泊2日。子供たちに地震への備えの大切さを訴えようと、資金調達から運営まで学生が担った。寸劇やクイズを楽しみながらの学習会のほか、非常食アルファ米の調理法やロープの結び方も学ぶ。初めての試みだが、希望者は50人になった。


東北福祉大は、阪神大震災を機に、全国で初めてボランティアを単位として認め、1998年に学生の活動を支援するボランティアセンターを設けた。現在、公認サークルだけで40団体を数える。
「ウィズ」は、このボランティアセンターに2年前、併設された「地域減災センター」を拠点にしている。2004年の新潟県中越地震の復旧支援活動を機に「減災」の啓発活動を開始。地元の消防や企業、行政と協力してオリジナル非常食の開発や防災ハンドブック作りなどを手がけてきた。「人脈が広がり、街で声をかけられることが増えた」と代表の塩谷行浩さん(21)(3年)。
30年以内に次の宮城県沖地震の発生が確実視される地域だけに、「ウィズ」以外にも、高齢者福祉や児童福祉などの減災活動が生まれている。地域の様々な組織と交流することによる学生への教育効果は高い。


減災センターでは、行政やNPO、企業など18団体と「パートナーシップ協約」を結び、企業や行政、市民活動団体などと「地震津波に強いまちづくり実行委員会」を作るなど、地域とのパイプ作りを強力に進めてきた。
昨年度は学生らによる地域への出前講座が15回を数え、学生が作った啓発冊子を教材に、町内会が自主勉強会を開いたこともある。減災センターの知名度アップで、センター入り口の「減災カフェ」は地域住民の相談窓口としてもにぎわう。
学生を支えるのは3人の教員と8人の専任スタッフ。減災センター主催の防災講座も数多く開かれる。こうした講座や啓発冊子作り、減災カルタ大会など多角的な活動が評価され、4日には、防災功労者の総理大臣表彰を受けた。今年度からは大学のカリキュラムに「地域減災プランナー」の資格取得が可能な「減災・予防福祉コース」も新設した。
「減災は福祉や地域の問題を学ぶ絶好の切り口。大学の貢献というより、我々が地域に育ててもらっているというのが実感だ」と二つのセンター長を兼ねる小松洋吉教授(59)。今後はハード面の研究で実績のある東北大学などと連携し、総合的な地域防災につなげる構想もある。
大学と地域の地道な関係作りは、いざと言う時に真価を発揮しそうだ。(片山圭子、写真も)

地域減災プランナー 災害時に自分や家族の生命を守り、地域の被害を抑える知識と実践力を備え、地域に貢献できる人材育成を目指した東北福祉大独自の資格。取得には「災害福祉論」「減災技術論」といった講義のほか、地域での実習「減災・予防福祉演習」など53単位が必要。現在は総合福祉学部の60人が履修中。将来は他の2学部(子ども科学部、健康科学部)でも履修が可能にし、地域住民向けコースも開講予定。

宮城県宮城県沖地震があったことでも有名ですし、太平洋側の三陸沖は地震の群発地域です。(それにしても大地震の発生確率が世界一とは…驚きました)そうした意味では、他の都道府県と比べても防災に関する意識が高い地域といえるでしょう。過去記事でもお知らせしましたが、自治体と学校の連携も進んでいることから、こうした活動を行っている学生がいることも頷けます。


(過去記事)
災害時に学校を開放する(2007/07/09)

東北福祉大学で独自に設置している資格「地域減災プランナー」というものも面白いですね。
地震が発生する確率の高い宮城県ならではの特色ある取り組みだと思います。大学は敷地が広いので、災害時に市民の安全を確保するための場所としても活用されます。こうした活動をもとに、自治体と連携・提案していけるようになると万全の防災対策が取れるのではないでしょうか。