Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大学間の戦略的連携を文部科学省が支援

high190です。
文部科学省では2008年度から大学間の戦略的連携の支援事業を実施します。

文部科学省は08年度から、国公私立を超えた大学間の戦略的連携を支援する事業を始める。地方大学や小規模大学などが限られた予算の中で単独で環境整備を進めるのが難しい場合に、相互補完的な教育プログラムや、得意分野を持ち寄った研究などを選定して支援する。知的財産管理や教員研修、インターンシップ(就業体験)窓口など大学運営全般を対象にする。08年度予算で50億円の概算要求を盛り込む。
08年度新施策として取り組む「戦略的大学連携支援事業」は年間40件、5年間で計200件を採択する。助成額は一件当たり5000万―3億円で、3年間支援する。
大学改革で各大学は個性化を進めてきたが、予算や人材が不足し、取り組みが不十分なケースも少なくないのが実情。大学連携で一般的なのは授業を共有する単位互換。このほか最近では、文科省の教育・研究の公募プログラムに基づく連携提案が一部出始めた程度とされる。一方、複数校の連合による地方大学の教育充実は政府の「骨太の方針07」で重点施策と位置づけられている。
これらを踏まえ、打ち出すのが今回の新事業。例えば、大学連合での提案は大学設置基準等の改正(08年4月施行)で義務づけられた教育内容・方法をめぐる教員研修について、複数大で共通の研修プログラムを整備することなどを想定している。
生涯学習の授業も、経済、人文社会、理工系の各大学が協力して用意すれば幅が広がる。また知的財産管理、留学生受け入れ、インターンシップ窓口の運営も地域の国公私大が連合して取り組めば、より効果的と期待される。
教育面では私立薬科大と、薬学部はないが医学部を持つ国立大の連携などが見込まれる。研究面では神経・内分泌系に強い群馬大学と、がん・免疫で実績のある秋田大学が連携し実績があり、これら事例を参考にしてもらう。

この事業、主な対象は中小規模の大学ですが、それぞれの強みを活かして協力し合うという方向性は良いと思います。しかし、現実問題として、自組織の強みを容易に外へ出せるかどうかが成否の鍵を握るのではないでしょうか。
「大学プロデューサーズ・ノート」のマイスター氏もオバタカズユキ氏との対談で述べていますが、*1大学には独自でイノベーションを起こしにくい組織風土があります。そこを理解した上で「戦略的な」連携が可能かどうか、そこが重要になってくると思います。

ちなみにアライアンス*2の経営的意味は次のとおりです。

複数の企業が互いに経済的なメリットを享受するために、緩やかな協力体制を構築すること。
1つの企業に統合する必要があるM&Aに比べて、時間・資金をそれほど要することなく進めることができ、思惑が外れた場合の解消も容易にできる点で異なる。ただし、緩やかな結びつきであるために、アライアンスを構築した後のコントロールは各企業に委ねられ、シナジー(相乗効果)が当初想定したほど発揮されない場合もある。
企業にとって、ヒト・モノ・カネの資源は有限であり、経営者は、限られた資源を有効に使って企業価値を最大化することを求められている。有限資産であるヒト・モノ・カネを有効に使うために、異なった競争優位性を持った強者同士が組む戦略的提携(strategic alliance)はお互いの独自性を維持しながら技術面、生産面、販売面などで補完することができるために成功する確率が高くなる。
以前は、IT・電機・通信・金融など競争が激しい業界を中心として、アライアンスが活発であったが、株式交換などが活発になるにつれて、多くの業界においてアライアンスが展開されている。

アライアンスを構築した後のコントロールをどのように行うか、それは各大学の判断に委ねられます。企業での戦略的提携を大学で活かせるような人材(例えば、企業の合併等を経験した人)がいると、こうした提携もうまくいくのかも知れませんね。