Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

加速するアジア大学間競争

high190です。
この日記でも再三取り上げていますが、アジアにおける学生獲得競争が加速しています。

アジア留学生増へ戦略会議案 大学連携で単位取りやすく(2007/04/18)

立命館APUの成功の秘訣は?…国際化効果で就職率98%(2007/05/04)

九大が地球に優しい講座 石炭の有効活用伝授 アジアの技術者育成(2007/05/25)

いずれの記事でも、日本の大学が本気でアジア・マーケットに進出しようという様子が伺えます。
しかし、迎え撃つ各国もしっかりとした準備をしているようです。

「アジアの優秀な頭脳を呼び込め」――。日本の大学が中国などアジア地域から優秀な留学生を獲得しようと躍起になっている。京都大や神戸大などは相次いで中国に事務所や連絡所などの駐在拠点を開設。現地入試を行う大学も増えている。韓国やマレーシアの大学なども中国人留学生らの受け入れを拡大しており、国境を超えた誘致競争が過熱してきた。
「優秀な学生を派遣してくれませんか」。神戸大大学院経営学研究科の黄磷教授は毎月のように中国全土の大学を飛び回り、こんな呼び込みを繰り返している。中国での大学訪問は調査・研究もあるが、もう1つの重要なミッション(使命)が「優秀な留学生の獲得」だ。
神戸大は2004年3月、北京市に現地事務所を開設した。日中ビジネス関連のセミナーなどを開いて研究成果をアピールするとともに、現地の大学と留学生の派遣や受け入れについて交渉を重ねてきた。事務所責任者を兼ねる黄教授は「神戸大の認知度は高まっている」と胸を張る。


●トップ級に照準

経営学修士(MBA)の取得を目指す中国の若手ビジネスマンから神戸大への留学の相談が相次ぐようになった。黄教授は「米国に留学していたトップ級の人材を呼び込みたい。単なる人数集めは考えていない」と言い切る。
成長著しい優秀な中国人留学生を呼び込めば、その後の活躍を通して「国際的なブランド力が向上し、結果的に全入時代の国内での生き残りにつながる」(関西の私立大)と考える大学は少なくない。
中国で現地入試を行う大学も増えてきた。同志社大は05年から外国人が日本語を学ぶ「留学生別科」の入試を北京で実施、昨年からは上海でも始めた。現地入試では、日本語での面接や筆記試験を行う。6月に行った現地入試の志願者は計約60人で、昨年の38人から大幅に増えた。黒木保博副学長は「将来は各学部で中国入試を行いたい」といい、同志社大は年内にも中国に事務所を開設する。
優秀な留学生を狙うライバルは日本の大学だけではない。韓国の延世大(ソウル市)は新制度を来年にも導入する。中国の大学や高校が卒業式を迎えた直後の9月から韓国の大学が新学期に入る3月までの「予備学期」を設け、韓国語と韓国文化を集中して学んでもらう制度だ。
半年間の“空白期間”を嫌って米国などに留学してしまうケースが多かったためで、国際交流を担当するハ・ヨンソップ教授は「正規課程の履修前に語学を磨いておきたいというニーズも満たせる」と話す。
マレーシアは日本を含めたアジア域内の留学生受け入れをサービス産業ととらえ、大胆な留学プログラムを整備する。その1つが「ツイニング方式」。マレーシアの大学で1―3年学んだ後、米英や豪州にある提携大学に転入するプログラムだ。マレーシアでは提携大が指定するカリキュラムで講義を履修、その後に提携先へ留学する。学位は提携大の名義だ。


●25年、世界の7割

自国の学生を対象に開発したプログラムだったが「欧米の大学に留学するより割安」とアジア域内の留学生が利用するようになった。約600校ある私立大のほぼ全校が導入済みという。同国高等教育省のズルキフリ・ハッサン事務次官は「ツイニング方式を利用するのは約5万人の留学生のうち25%程度」と断りつつも、「教育内容は欧米と変わらない。留学生にとっては非常に魅力的なはずだ」と強調する。
クアラルンプール近郊のダマンサラ地区にあるヘルプ大に今春入学した並木穂波さん(19)は2年後に豪州の大学に編入する予定だ。「日本の大学では交換留学生になれる保証がない。このプログラムなら間違いなく豪州留学の夢がかなう。費用も安い」と話す。
マレーシア国内から一歩も出ずに欧米の大学の学位を取得できるプログラムまで登場した。首都近郊のニライにあるインティ・カレッジでは3年間で英国や豪州などの大学を“卒業”できる。同カレッジの留学生担当者は「留学生はマレーシアの大学の学位が欲しいわけではない。場所貸しをしているようなものだ」と割り切る。
海外機関の予測によると、03年に約220万人だった世界の留学生は25年に約700万人に達し、7割はアジア出身者が占める。留学生の争奪戦が激しさを増すのはこれからだ。

マレーシアの大学が活用する「ツイニング方式」。
これは今後、留学への足がかりとして大きな効果と反響を呼ぶ可能性があります。自国の大学を卒業する訳ではありませんが、中継地点としての役割を果たすことで、国際的な地位を高めていこうという戦略。
マレーシアのようなニッチャーが取る戦略としては非常に優秀だと思います。今後の問題は、自国の大学における優秀な卒業生をどれだけ輩出できるかですね。

しかし、便利な制度だと思います。可能かどうか分かりませんが、日本の大学でマレーシアの大学と提携を結び、「ダブルツイニング方式」なんてものがそのうち出てくるかも知れませんね。