Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

モンスター・ペアレントのまとめ

high190です。
「モンスター・ペアレント」という言葉、もはや定着した感があります。

今回はその「まとめ」的な更新です。

学校に無理難題を突きつける保護者は、教育現場では「モンスターペアレント」と呼ばれる。指導力不足や不祥事を起こす教員など公教育への不信感が背景にはあるが、一方でこうした保護者の存在も教育現場を委縮させている。 (井上圭子)
神奈川県相模原市のある中学の校長室。母親同士が激しい言い争いをしている。しかも子どもの前だ。せっかく子どもが自分たちでいじめのトラブルを解決しかけていたのに、納得しない親たちが相手の子どもに罵詈(ばり)雑言を浴びせつける。
同校の教員(36)は「親が中学生と同レベルで本気で怒って泥沼化させてしまう。中には『身内には弁護士もいる』と裁判をちらつかせて責める親もいる」と話す。
こうした保護者に共通なのは「一方的な主張」だ。「うちの子がいじめられた」と訴える父親が、“容疑児童”の調書を作って乗り込んできたことがあった。他の子どもたちに聞き取り調査まで行い「〇月〇日、A子はどこで誰に何をした」などと数十ページにわたって詳細に記し、「悪質なA子の転校を求める」と要求された。「自分の子だって他の子をいじめてるのに、わが子の『やられた』という言い分しか信じない」とこの教員は首をかしげる。
電話での問い合わせや苦情も「日常茶飯事」(ある教員)。東京都内のある公立小学校では毎日午前十時までと午後四時以降は、保護者からの電話応対の時間に充てている。教員は帰宅後も応対が終わらない。真夜中に生徒の母親から「離婚したいけど先生どう思う?」と、家庭内のことで自宅に相談の電話がかかってきたこともあった。この教員(32)は「こんなことまで私の仕事かと思いながらも、邪険にしたら後で何を言われるかと思うと切れなかった」と告白する。
学校の指導法にクレームをつける保護者もいる。教育上決めたルールに従って進めているのに「うちの子は足が速いのになぜリレーの選手になれないのか」「うちの子は二十五メートル泳げるはずなのになぜ検定に受からないのか」と苦情がくる。
前週に配ったプリントを子どもが親に渡し忘れていたのに「本当に配ったのか」と非難される。後にランドセルの奥からプリントが発見されると「先生の指導が悪い。おかげでうちの子の課題提出が遅れた」と逆ギレされた。東京都中央区の公立小学校教員(36)は「保護者に全く信用されていない」と嘆く。
「学校の監視」は徹底している。校庭を見下ろす高層マンションに住む保護者は、双眼鏡で体育などの授業の様子をチェックしては、翌日の連絡帳に「ここはこういう指導法に変えた方がいい」などと細かく“アドバイス”してくるという。こうした保護者は、いつでも急降下(要求)できる状態で子どもや学校現場の上空を旋回することから「ヘリコプターペアレント」とも呼ばれる。
こうした保護者が増えた背景には教育への不信感があるが、それだけではないようだ。都内のある公立小学校の校長(58)は「消費社会の中で、親の意識が『学校とともに子どもを育(はぐく)むパートナー』から『サービスの受益者』に変わり、顧客満足度が学校評価の物差しになった。その上、以前は地域で子育てする中でわが子の位置を自然に把握できたが、今は近所付き合いもなく自分の子しか眼中にない親が増えた」と分析する。
前出の相模原市の中学教員は保護者の現状を「一学級に生徒が三十五人いるとすると、親を含めて五十人以上の子どもの面倒を見ている感じだ」と例える。

最後に出てくる「親を含めて五十人以上の子どもの面倒を見ている感じだ」というコメント。
これこそまさにモンスター・ペアレントの恐ろしいところではないでしょうか。

保護者が突きつける無理難題に、教員たちは日々対応を迫られ疲れ切っている。だが、親も教員も本来「子どものため」を思う気持ちは同じはずだ。お互い協力して子どもの教育に取り組むための方策はないものか。
「担任はうちの子を問題児扱いした。内申点が足りずに中学受験に落ちたら担任のせいだ」
私立中学進学熱の高い東京都内の区立小学校の校長室に、わが子の通知表に不満を持った父親が乗り込んできた。
この児童は「宿題はやらないことが多く、提出物は忘れがちだった」と担任教員(30)は言う。何度も催促したが、これでは採点ができず通知表はその結果だった。校長が事情を説明しても父親は信じなかった。
モンスターペアレント」の特徴は、一方的に学校を批判することだ。学校側が事情を説明し理解を得ようとするが、なかなか伝わらない。しかも学校を飛び越し教育委員会に苦情を申し立てたり、訴訟を起こされることもある。こうなると対立は決定的となり、学校と保護者が話し合いで問題を解決する方向にいきにくい。
その上、保護者の学校への不信感は子どもにも影響する。「教育委員会にチクる(密告する)ぞ」。ある教員(34)は「こんな言葉を吐く十二歳を見ると、背後に保護者の影を感じて空恐ろしくなる」という。
持ち込まれる苦情に教員のストレスは増すばかりだ。苦情を受ける部署のあることが多い一般企業と違い、学校では個々の教員が直接保護者と向き合わざるを得ない。
別の都内公立小教員(28)は「連絡帳に何か批判的なことが書かれていると、自分は悪くなくても面倒だからつい『すみません』と書いてしまう」と話す。神奈川県のある小学校教員(36)も「こちらがもっとき然とすれば親の態度も変わるかも」と自戒しながらも「疲れ切っているので謝って済むなら何度でも頭を下げてしまう」と告白する。
こうしたストレスも一因で精神疾患となる教員もいる。文部科学省によると、一昨年度に全国で病気休職した教員のうち四千百七十八人(59・5%)が精神性疾患で、十年連続で増加している。
学校にも課題はある。苦情にさらされる教員を守る組織力が不足している。ある教員(37)は「気をつけていてもけがをさせてしまうことはあるし、わが子の命に親がむきになるのは当たり前。問題は学校の体制や設備がその原因の場合でも、校長が担任の責任にして逃げるケースが増えたこと。これも教員個人の訴訟費用保険加入が増えた原因の一つ」と指摘する。
東京都港区教育委員会が、こうしたトラブルに対応するため専任弁護士を設ける「学校法律相談」制度を始めたが、試みは始まったばかりだ。
双方が対立してしまう背景には、コミュニケーション不足もある。以前は当たり前のようにできた家庭訪問も、今は共働きなどで保護者不在が多い。個人情報保護法が壁となり、以前のように詳しい家庭状況調査もできない。都内の中学校長(58)は「情報不足、コミュニケーション不足だから不安になる。お互いの顔や考えがわかれば、ささいなことで苦情は来ない」という。
「教員はつくづく“接客業”だと思う」と前出の教員(34)はため息をつくが、逆転の発想を求める声もある。千葉県の中学校教員(50)は「『困った親』は、実は『困っている親』『困っている子どもの親』。苦情をSOSだと思って耳を傾ければ、逆に強固な信頼関係を築くきっかけになる」と話す。

教師にはある程度の「ゆとり」が必要だと私は考えます。
それは教育を実践する立場にある教師が、肉体的・精神的に追い込まれていては、子どもに対して教師としての役割を果たせなくなる可能性があるからです。
学校の目的は教育を行うことであって、その専門的人材である教員が目的を果たせないようなことがあれば、学校は他の機関等と連携して「モンスター・ペアレント」と関わっていく必要も考えなければなりません。

[過去記事] 学校が弁護士に直接相談 港区、理不尽要求に対応(2007/06/12)

上記記事のように弁護士に相談をアウトソースするということも、今後増えてくるのではないでしょうか。
しかし、本質的な問題解決にはどうしても「親の教育」という部分が必要になってくると思います。そうした部分を大学が公開講座等で担っていくことが可能になれば、学校組織が機能的に連携していけるのではないかと思います。

[Reference Information]