Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

学生の経済状況はいかに?

high190です。
本学でも日本学生支援機構奨学金に関する業務を行っていますが、年々申請者は増加傾向にあります。
格差社会」と言われるここ最近の世の中ですが、学生の生活にはどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

学生生活の実像を表す記事がありましたので、お知らせします。

「学費が高くて毎日モヤシごはんです」(信州大学)。高学費にあえぐ大学生の声を集めた『学費黒書』(全日本学生自治会総連合)。

そこから見えてくる学生生活は―。

「親は不動産業をしていますが、不況で収入が減り、毎日パンの耳やカップラーメンばかり食べています。コンビニにいくと、高いカップラーメンも売っているけど、食べられるのは、安売りをしているものばかりです」(東京大学
高学費に加えて、リストラや貧困・格差の拡大が家庭を襲っています。
同じく東京大学の学生は「不況で父が職を失い、再就職したものの十分な収入がないうえ、三人兄弟であるため、二番目の私はまだ何とか通わせてもらっているが、妹が希望している通り大学に進めるかどうかは学費を考えると非常に厳しい」と語っています。
学費や生活費を稼ぐために、肝心の授業にも出られない事態まで起こっています。
名古屋工業大学第二部の学生は「学生で自分にかかわる学費すべて(授業料、教科書代、その他)を払っている。そのために新聞奨学生をやっているが、毎日が時間に追われて友達や学生生活をゆっくりと楽しむ余裕がない」と訴えます。
「月五万円のバイト代を稼ぐのに週三回働いている」というのは、京都の大学生。「バイト代の五万円は食費や交通費に消え、本も買えません。教科書は去年から一冊も買えていません。これ以上バイトを増やすことは、部活動があるのでできません。部費も年間二十万円弱かかり、これ以上学費が上がると、生活ができなくなります」
別の京都の大学生は「学費が高すぎて下宿できず、自宅から二時間かけて通っています。疲れて授業中寝てしまい、悪循環です」と語ります。
こうしたもとで、学費の無償化など教育予算拡充を求める切実な声が相次いで出されています。
「お金のない人は教育を受けるなということでしょうか。民主主義が成立するためのサポートがおろそかになっている」(京都の大学)、「教育に市場原理を導入するのが誤り。トンネルや橋に使う金があったら、大学に使うべきです」(東京大学)、「北欧のように、授業料を無料にしてほしい」(東京学芸大学)と訴えています。
有利子となっている奨学金制度については「奨学金はほんらい返済義務の生じないものだ。日本の奨学金は返済義務が生じるので奨学金といえない」(信州大学)と厳しい声が聞かれます。奨学金を受けられないとの訴えも多く、「奨学金の基準をもっと低く設定してほしい」(東京学芸大学)との意見も多く上がっています。
研究費予算不足を訴える声も。「器具が買えず実験をあきらめた。違う器具でむりやり実験した」(信州大学)などと実態を紹介しています。

大学で学びたい人はたくさんいる反面、経済的な事情で学業を続けられない人などがいることも事実です。
学生の経済的支援をさらに充実できる奨学金制度など、どなたか財団を設立してくれないものでしょうか。

明治時代には渋沢栄一のような篤志家がいましたが、公的支援制度がさらに広まることを望んでいますし、新しい取り組みが必要になってきていることを痛感しています。