Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

特区で認可の株式会社大、私大にくら替えへ…税制優遇なく

high190です。
最近、何かと話題の株式会社立大学ですが、株式会社グロービスが運営するグロービス経営大学院大学は学校法人の法人格取得を目指していることが判明しました。
現在、文部科学省に学校法人の設置認可を申請中のようです。

株式会社立の「グロービス経営大学院大学」(東京都千代田区)が来春、学校法人が経営する私立大学に生まれ変わる見通しになった。
大学院大学を経営する株式会社「グロービス」から学校法人の設立申請を受けた伊吹文部科学相が14日、大学設置・学校法人審議会に設立認可を諮問した。認可されれば、株式会社立大から私立大への初のくら替えとなる。
株式会社による大学設立は2003年、構造改革特区に限って解禁され、今春までに計7大学が設立された。学校法人を設立する事務手続きが省けるなどのメリットがある反面、私学助成金や税制面での優遇措置を受けられない。同大学院大学は学校法人設立について、「将来的に教育研究への投資を充実していくことを考えると、税制面での優遇を受ける方がいいと判断した」と説明している。
大学院大学は06年4月、社会人向けのビジネススクールを経営するグロービスが東京と大阪に開校。計約180人が学んでいる。

上記のプレスリリースを読むと、次の点において法人格の取得を目指したポイントが明らかになります。

    1. 今後の教育投資において、学校法人であれば税制上のメリットがあること
    2. 特区に縛られない教育を広く行うためには、学校法人の方が有利であること

私見ですが以上2点の理由以外に、株式会社立大学への社会的な信用が失われつつある(LEC大学院大学における問題)ことからも、学校法人として健全な運営に努めたいという観点があるのではないでしょうか。

文部科学省は11日、規制緩和に伴って大幅に緩やかになっていた法令「大学設置基準」を一部改正する方針を固めた。大学の自主性に委ねられている授業形態について、基本的なルールを明文化する。


来春から設置基準を厳格化


株式会社立の「LEC東京リーガルマインド大学」(東京・千代田区)が、予備校と混然一体となった授業を行っていたことが発覚したため、授業形態の多様化に一定の歯止めをかける必要があると判断した。2008年4月からの施行を目指す。
大学教育の多様化を進める目的から、大学設置基準は1991年以降の改正で、細かい規制が減らされ、最低限の条件が記されるだけになった。その結果、株式会社の大学設立や、英語の授業を英会話学校に委託するような「授業の外注化」も可能になった。
一方で、LEC大を巡っては、経営母体の株式会社が全国展開する資格試験対策予備校の学生と、LEC大の学生が、同じ教室で一緒に授業を受けている問題が表面化した。しかし、大学設置基準には授業形態に関する明確なルールが定められていないため、文科省はこうした授業を法令違反に問うことができず、最終的に、専任教員が授業を行っていなかった点などを法令違反と認定し、LEC大に改善勧告を行った経緯がある。
このため、今回の改正では、〈1〉授業科目の開設は(大学が)自ら行う〈2〉大学が専用の施設を有する――などと明記。大学が授業に必要な教員や施設を自前でそろえ、指導計画も大学の教員が定めることを改めて徹底する。
改正後は、LEC大のような授業形態のほか、授業を外注する際に大学が授業内容の決定にまったくかかわらない「丸投げ」も法令違反となる。また、アルバイトやボランティアを単位認定する場合、単に学生を企業に預けるだけのようなやり方も法令違反に問われる可能性がある。

文部科学省は来春から大学設置基準を厳格化する方針を固めていますので、今回のグロービス経営大学院大学の決定は他の株式会社立大学にも影響を与える可能性があります。
個人的には、米国でのフェニックス大学のような成功事例もありますので、株式会社立大学が参入することで日本の高等教育がさらに充実していけばいいなと思います。