Clear Consideration(大学職員の教育分析)

大学職員が大学教育、高等教育政策について自身の視点で分析します

大学卒業時に2つの学位取得を可能に 関西学院大学のジョイント・ディグリー制度

high190です。
現在の日本の大学の多くは、卒業と同時に学位をひとつ与えています。複数の学部で連携的に学び、学位を2つ取得する「ダブル・ディグリー」は、海外の提携大学との間では実施されていますが、同一大学内では行われてきませんでした。複数コースを選択できる制度を導入している大学は数多くあるものと思われますが、やはり社会的に学位を2つ取得しているということは大きな強みになります。
関西学院大学では、「ジョイント・ディグリー制度」を日本の大学で初めて採用し、注目を集めています。

4年間で2つの学部を卒業できる「ジョイント・ディグリー制度」を日本の大学で初めて採用した関西学院大学。第1期生の4人が3年で早期卒業し、4月から別の学部の4年生に編入学した。経済学部と法学部など2つの学部で学ぶことで複眼的な思考も身につくといい、全国の大学や企業が関学の新しい制度に注目している。「複数の分野を習得し、2つの学士号取得を目指そうという意欲あふれる学生が初めて誕生したのは喜ぶべきこと」。3月19日、兵庫県西宮市の関学上ケ原キャンパスで開かれた卒業式。平松一夫学長は式辞の初めに、ジョイント・ディグリー制度で4年生に編入学した4人を称賛した。
そのうちの1人、経済学部を早期卒業した柏原伸彦さん(21)は4月から法学部の授業を受けている。1年生から積極的に単位を取ってきたので、4年生で30単位を取れば、来年3月には2回目の卒業式に臨むことができる。柏原さんが2学位取得への挑戦を決めたのは1年生の夏ごろ。経済と法律の両方に興味があったからだ。毎日2―3コマと、普通の学生よりたくさんの授業に出る生活に、友人からは「どうしてそんなに単位を集めているの」と不思議がられたこともある。3年生での早期卒業が認められるには、平均で80点以上を取らなければならない。試験前は忙しかったが、「自分で高いハードルを設定し授業に身が入った」と3年間を振り返る。
経済学部では統計学、法学部では民事訴訟法のゼミに入った。「経済学部は効率性をまず考えるが、法学部では逆の視点から見ることができる。複眼的なものの見方を身につけたい」と語る。柏原さんはその努力を糧に、今月から公務員試験にも挑む。

●学部の垣根低く
同大学の村田治教務部長(経済学部教授)によると、関学ジョイント・ディグリー制度を実現できたのは学部間の垣根が低かったから。学部の垣根をなくし学際的なカリキュラムを組むなどの努力をしてきたのが実を結んだという。制度の基礎になったのが関学が1997年度に導入した複数分野専攻制(MDS)だ。1つの学部(主専攻)に所属しながら、別の学部(副専攻)でも学べる制度で、副専攻で約40単位を取得すると、主専攻の卒業証書に加え副専攻の修了証書が授与される。ジョイント・ディグリーはこのMDSに3年間での早期卒業制度と4年編入制度を組み合わせたもの。早期卒業には、3年間で卒業に必要な124単位を平均点80点以上で修了する必要がある。2学部を卒業するには、MDSの40単位に加え、さらに20―30単位が必要になる。
MDSに1年生で挑戦するのは100―120人。このうち修了するのは30人程度にすぎず、ジョイント・ディグリーはさらにハードルが高い。

●就活で質問続々
しかし「2つの学位を取ることは社会的にも意味合いが大きい。企業はチャレンジ精神と自己管理能力を高く評価し、就職にも大きな力を発揮する」と村田部長は指摘する。
社会学部を3年で早期卒業し、法学部4年に編入学した壺井えり子さん(21)は、3月に早くも1社から内々定をもらった。会社訪問で面接を受けると、「そんなことができるの?」「挑戦した動機は?」「それで何が得られたの?」と、ジョイント・ディグリーへの質問が相次いだという。
「大学の4年間でこれだけやったと形で残るものがほしかった」と壺井さん。「勉強だけの生活はいやだった」といい絵画部に所属、アルバイトもした。「積極的に行動範囲を広げていくことが面白いのがわかった」。忙しかった3年間の達成感は十分だという。「勉強するかしないかで、大学時代にこそ差がつくようになってきた。ジョイント・ディグリーで優秀な学生を本当に伸ばせる」(村田部長)といい、さらに制度を充実させる考えだ。
関学にはジョイント・ディグリーへの問い合わせが各地の大学から何十件もきている。愛知淑徳大学が06年度から導入するなど、追随する動きも出始めた。

私事ですが、大学時代に他大学の講義(経営戦略論、経営倫理、開発経済学などです)を聴講して勉強していました。そういった勉強が公に学位として認められるならどんなにメリットがあるだろう・・・と思ったことがあります。(結果として、他大学で学んだことは現在でも非常に役立っていますし、そういった機会があったことはとてもプラスになりました)この「ジョイント・ディグリー制度」の最も良い点は、学生の学問へのモチベーションを高められるということにあると思います。

    1. 大学時代、「2つの学位取得」というモチベーションを与えることで学生を学問に向かわせることができる。
    2. 2つの学位を持つ学生は社会的にも評価され、大学の評価を高める。
    3. 大学内で複数の学部が連携することにより、教学面を強化できる。

ジョイント・ディグリー制度には以上のようなメリットがあると思います。ある大学の学長インタビューでは、今後は1つの専門に留まらず、複数の学位を持つ人材が増えてくるだろうという予測を立てていました。時代はまさにその方向へと動き出しています。今後、取り入れる大学が増えてくるのではないでしょうか。

(2014/03/04追記)ジョイント・ディグリーで学部時代に2つの学位を取られた方のインタビュー記事が、関西学院大学のWEBサイトに掲載されていましたので追記します。*1

*1:「われら関学経済人」中 麻優子さん http://www.kwansei.ac.jp/s_economics/s_economics_004388.html